【映画紹介】トリュフォーの思春期-子供たちが織り成す王道のフランス映画
3ヶ月ほど放置してしまいましたが、また再開していきたいと思います。
トリュフォーの思春期(フランソワ・トリュフォー監督 1976年 フランス)の紹介です。フランスの地方都市に住む小学生たちの夏休み前の日常生活を、オムニバス形式で描きます。
沢山の子供たちが楽しそうに坂を駆け下りるOPシーンで早くも引き込まれます。色とりどりの服装の子供たちは瑞々しく、まるでドロップ飴缶のような映画です。
ストーリー
パトリック達の通う小学校はもうすぐ夏休みで生徒は浮かれ気味。
そんな中、ジュリアンという生徒が転校してきます。ボロボロの洋服を着て、いかにもな貧困家庭の子供です。このジュリアンは新しくできた友人と映画の無賃鑑賞などの悪さをします。
その他にも、パトリックが友達のお母さんに恋をする話や、先生や先生が住むマンションの隣人たちの話など、様々な話があります。
こういった様々なエピソードで、この映画は構成されます。
感想
- 監督について
池波正太郎が「トリュフォーは子供を撮るのがうまい」と指摘したとおり、まさに子供たちが活き活きと映されています。あどけない表情、可愛らしい表情から小憎らしい表情や憂いを帯びた表情まで。
子役はオーディションで選んだそうで、監督はとんでもない「眼」を持っているなと思います。余談ですが、トリュフォー自身の娘も出演しています。
- ジュリアンについて
物語の根幹をなす、不良少年のジュリアンを演じた子役の演技が非常にうまいです。『スタンド・バイ・ミー』のクリスを演じたリバー・フェニックスもそうですが、不良少年の退廃感と憂いを見事に演技しています。
クリスもジュリアンも家庭環境が悪いことが不良になる原因で、根っからの悪というわけではないのですが、その辺りも悲しげな表情や仕草で完璧に表現しています。
ジュリアン役はフィリップ・ゴールドマンという子役ですが、その他の出演作品が見つかりませんでした。他の作品も観てみたかっただけに残念です。
因みに、ジュリアンという名前からはスタンダールの『赤と黒』の主人公、ジュリアン・ソレルを思い出させますが、名前の関連性があるのか気になります。貧困階級という点では同じですが、本作品のジュリアンは野心家のような描かれ方はしていませんでした。
- 恋愛について
ませている!率直な感想です。
若干のネタバレになりますが、パトリックは友達のお母さんへ気持ちを伝えるために、薔薇の花束を渡します。小学生ですよ笑。
また、パトリックを連れる友人は中学生の年上女性にナンパをして成功させます。2対2の計4人で映画館に入るのですが、その友人はナンパした女性にパトリックが興味がないと知るや(友人の母が好きですからね)、二人の女性の間に自分が座り、二人の肩に手を回しながら「両手に花」の状態で映画を鑑賞します。もう一度言います。小学生ですよ笑。
- 先生について
パトリックとジュリアンの担任の先生が夏休み前のHRで生徒にメッセージを伝えます。諸事情によりクラスを離れてしまったジュリアンへの優しさと社会への希望を謳うメッセージは映画に深みを添えます。
このシーンを子供たちに見せるために、小学校のHRでこの映画が上映されたらいいなと思います。
- 全体を通して
子供たちは色とりどりの服を着ていて、また部屋の中も鮮やかな色の小物が多く、全体的にカラフルな映画です。色彩の豊かさは『シェルブールの雨傘』、『ロシュフォールの恋人たち』、『DIVA』や『ミックマック』に近しいものがあります。鮮やかな色彩はフランス映画の特徴なのでしょう。
そして、印象的なカメラカットは物語の終盤、ジュリアンの家からズームアウトして小ぶりな紫の草花を写した所です。花の儚く健気な美しさはジュリアンを表すのでしょう。まるで詩の一場面のような美しさです。
フランス映画はお洒落というイメージがありますが、この映画も多分に漏れません。色彩鮮やかで詩的な映像とエスプリの効いた笑い、さり気ないメッセージが込められるこの映画はフランス映画の王道と言えます。
私はフランス映画が好きなのですが、このような映画を観てしまうと益々フランスにかぶれてしまいます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。