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【書評】寛容論

寛容論(ヴォルテール著 光文社古典新訳文庫)についての感想です。

 

本の概要

フランスの思想家ヴォルテールが、「カラス事件」を題材に、寛容であることの大切さを説いた本です。

 

カラス事件

 1762年フランスのトゥールーズ市にてジャン・カラスが息子殺しの濡れ衣を着せられ、死刑になった冤罪事件です。ジャン・カラス一家プロテスタントであり、長男は近くカトリックに改宗予定でした。

 1761年、長男が首を吊った姿で発見されました。「プロテスタントは息子がカトリックに改宗するときは息子を殺す」という噂を市民が信じてしまい、この噂が広まってしまいました。もともとトゥールーズカトリック勢力が強く、ユグノー(フランスにおけるカルヴァン派の呼称)を虐殺した歴史があります。さらに、その虐殺の200周年祭が近く開催されることもあり、市民はさらに加熱し、ジャン・カラスを糾弾しました。裁判では、カラス一家に不利な証言は出てきませんでしたが、プロテスタントであることが証拠の代わりとなりました。

 その結果、ジャン・カラスは証拠がなく、物理的に殺害不可能であるにもかかわらず、死刑に処され、一家も離散しまた。狂信が理性を負かしてしまった事件です。

 死刑に憤慨したヴォルテールは被告とその家族の名誉回復のため、奔走します。再審が認められ、1765年に全ての裁判官の満場一致で一家の無罪が証明されました。

寛容であることの必要性

 ヴォルテールは、本書の中で、寛容であることで国家や民族は発展してきたと説きます。例えば、古代ギリシャ、ローマ、ユダヤ教、中国、日本を例に挙げて説明しています。因みに、日本は最も寛容な国の1つであったが、イエズス会の来訪により、寛容が崩れたとヴォルテールは述べています。

 また、カロライナ(北アメリカにあるイギリスの植民地)は、ジョン・ロック基本法を作りましたが、法的に認可される宗教は男性7人の申請があれば足り、これほど寛容であっても、トラブルは起きていないとも述べています。

 勿論、寛容が大切だからと言って、全ての行為が許されるわけではなく、ヴォルテールは「洗礼を受けて死んだ子供は永遠の至福を得られる」との言葉を信じ、子供を殺害していった、デンマークの小さな宗派を例に出し、「大きな善のための悪は許されない」と諌めています。

 

感想

多様な人種・宗教・性別の人が共存する現代社会において、他者を狂信的に憎み、排斥しようとすることは大きな摩擦や対立を引き起こします。そのため、常に理性を持って、他者に寛容でありたいと思った次第です。人種や宗教に限らずとも、突飛な考えや意見についても、まずはその背景や理由をしっかり聞いて、判断したいと思いました。

 

あとがき

「差別をしないことが理想だけれども、現実は難しいぜ」という映画を最近見てタイムリーでしたので、書きました。こちらも読んでいただけると幸いです。

ambf.hatenablog.jp