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【映画紹介】歩いても 歩いても-家族の団らんに潜むエゴ

歩いても 歩いても(是枝裕和監督 2008年 日本)の紹介です。

キャッチコピーは「人生はいつもちょっとだけ間に合わない」

長男の15周忌で集まった横山家の家族団らんと、その裏にある感情の機微を描いたホームドラマです。

なんと、阿部寛夏川結衣の、「結婚できない男」で共演した2人が夫婦役で出ています!

勿論キャラ設定は違いますが、ファンとしては嬉しいものです。

 

トーリー

夏のある日、良多(阿部寛)は再婚した妻ゆかり(夏川結衣)、連れ子のあつしと神奈川県の三浦海岸近くの実家に帰省した。

15年前に死んだ長男、純平の命日を忍ぶために、姉(you)夫婦を含む家族で集まったのである。

失業していたことを隠していた良多は、両親に会うことが苦痛であった。

感想

  • 会話の妙

大きな事件や場面の変化もなく、殆どが家の中での撮影です。家族が集まった何気ない日常を切り取る映画なのですが、会話の間や言葉がとてもリアルで、引き込まれます。

特に、樹木希林とyouのやり取りは実の親子以上に息がぴったりで、とんでもない演技力と脚本だなと思います。

  • 美味しそうな食べ物

食べ物が美味しそうなところもこの映画の魅力です。樹木希林とyouが料理を作っているシーンで始まります。

にんじんの皮を包丁で削ぐ音、豚の角煮をことこと煮ている画。そしてとうもろこしのかき揚げを揚げている音。料理の手際のよさと美味しそうな音が食欲をそそります。

私はこの映画でとうもろこしのかき揚げを知り、それがとても美味しそうだったため、居酒屋等にあると、必ずと言っていいほど注文してしまいます。

監督は、著書の中で、「食事シーンでは食べることよりも準備と片付けが大事だと言うことは向田邦子さんのホームドラマで学んだ」と述べています。

それだけ、料理シーンには力を入れたのでしょう。

  • 登場人物の本心

表面上は和やかな横山家ですが、裏には秘めた思いがあります。

良多の父(原田芳雄)は小さな町病院を開業していましたが、高齢となり後継ぎがいないために廃業しています。廃業を後悔しているのか、孫のあつしに医者はいい職業だということをこっそり吹き込みます。(血は繋がっていないですが、聡明なあつしに期待しているのでしょう。誰に対しても気難しいですが、あつしには優しいです。)

それを聞いた良多は余計なことを吹き込むのはやめてくれと一蹴します。良多と父もその昔、進路で揉めたのでしょう。

また、樹木希林は良多の結婚相手が初婚でないことに不満気です。娘のyouに愚痴をこぼしたり、ゆかりに子供は作らない方がいいと言ったり、良多のパジャマは用意しても、ゆかりの分は用意していなかったりします。

極めつけは、純平に線香をあげに来た青年を、(青年が海で溺れているのを助けたために、純平は死んでしまいます。)来年から呼ぶのをやめたらと提案する良多に対して、樹木希林が言う台詞です。

「10年やそこらで忘れてもらっちゃ困る。憎む相手がいないだけ辛い。年に1度くらいは辛い思いをしてもらっても罰は当たらない」と本心を吐露します。

全体を通して和やかですが、このシーンでは緊張が走ります。穏やかな日常の中にも人間の怖さが垣間見えるシーンです。

優しく世話好きに見えても、腹には秘めた思いがあるのです。

  • 不器用な父と子

良多と父の恭平は互いに素っ気ないです。良多は父に対して敬語を使っています。優秀な兄と比べられたことや、医者にならなかったことでの確執があるのでしょう。

しかし、そこは親子。不器用ながらに、父は息子を心配します。息子に仕事がうまくいってるか心配の言葉を掛けたり、母さんが心配するからたまには電話してこいと伝えます。(実際は自分も心配で、息子と話したいのでしょう。)

良多は久しぶりに帰った家の風呂のタイルが剥がれてきていることや、風呂場に手すりが付けられていることに時間の流れを感じます。

また、向かいの老人の具合が悪くなり、家族は医者であった恭平に電話してきますが、今は引退した身であるため救急車を呼ぶよう伝えます。

救急車が来てから、恭平は家を出て容態を救急隊員に聞きますが、やじ馬の老人と思われて相手にされません。

この時の恭平の様子を良多はこっそり見てしまいます。偉そうに振舞っていた父の淋しそうな背中を見た良多もまた、悲しげな表情をします。

こういう何気ないカットや演出での表現が是枝監督は絶妙です。

 

映画のタイトルはいしだあゆみが歌う「ブルーライトヨコハマ」のサビの一節です。邦楽の歌詞をタイトルに使うのは2016年に公開された「海よりもまだ深く」でも同様で、こちらはテレサ・テンの「別れの予感」からとっています。

因みに、この映画でも主演は阿部寛で主人公の名前は良多です。

小津安二郎のように、同じ俳優で同じ役名ということを好んでいるのでしょう。

「海よりもまだ深く」も家族を描いたホームドラマで、「歩いても 歩いても」が好きな方にはこちらもおすすめです。

お読みいただき、ありがとうございました。