【西洋絵画】絵画の役割のざっくりとした変遷
当たり前の話ですが、現在、私たちが美術館や書籍等で見ることのできる西洋絵画の殆どは、画家が描いたものです。主体Aが画家に作品の制作を依頼し、画家は報酬を受け取ります。
仕事ですから、画家は自分の描きたいテーマを自由に描けるわけではありません。与えられたテーマの中で、画家は最大のパフォーマンスを発揮します。
この、主体Aと与えられたテーマが何であり、どういう風に移り変わったかというのが今回の話です。
それではざっくりと、「中世・ルネサンス期」、「絶対王政期」、「近代」の3つの時代に分けて説明していきたいと思います。
中世・ルネサンス期(15~16世紀)
主体A、つまり絵画を依頼していたのは、主にカトリック教会です。当時は教会が絶大な力を持っており、市民に対して豪奢な絵画を見せ、その力を示すだけでなく、聖書の話を市民に伝えるためにも絵画が必要でした。
聖書の文字が読める人は知識人であり、一般の市民は殆ど文字が読めなかったためです。そのため、必然的にテーマは、聖書の一場面を描いたものとなります。ダヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロ等が手がけた作品が有名です。
また、ルネサンス期では、メディチ家等の新興商人も芸術の担い手となりました。潤沢な資金を背景に、ボッティチェリやティツィアーノといった当代一の画家に制作を依頼しました。主にギリシャ神話をモチーフにした作品が有名です。
ミケランジェロ「最後の晩餐」
絶対王政期(17世紀)
16世紀から起きた宗教革命により、教会の力が薄れたこの時代は、王家や貴族が権力を持ちました。王の偉大さやカリスマ性を示すために、王は自身や家族を題材にした絵画の制作を画家に依頼します。
当時の優れた画家は宮廷画家として主君に仕え、専属の画家として活躍しました。筆頭はスペインのフェリペ4世に仕えた、ベラスケスです。24歳にして、宮廷画家に就任し、フェリペ4世は彼を寵愛するあまり、他の画家には一切自画像を描かせなかったと言われています。
因みに、この時代の作品は「バロック派」と呼ばれています。カラバッジョ、レンブラントやルーベンスといった画家が有名です。劇的なまでの明暗と豊満な肉体等が特徴です。
ベラスケス「ラス・メニーナス」
ルーベンス「キリスト降下」
近代(18~19世紀)
フランス革命等を経て、絶対王政は衰退していきます。次の主役は市民です。ようやく市民が芸術の主役となります。絶対的なパトロンがいなくなったことにより、画家は比較的自由に描きたいものを描けるようになりました。
また、油彩絵具の発達により、屋外での制作が可能になりました。これにより、市民の日常や風景を題材にした絵が数多く制作されました。画家は制作した作品を画商を通じて、販売します。因みにゴッホの弟、テオは画商でした。
この時代の画家は印象派と呼ばれます。日本でも馴染み深く、人気があります。モネ、ルノワールやマネが筆頭です。素朴な農村風景を描いたバルビゾン派では、ミレーが有名です。
なお、印象派の登場する背景の一つに、新古典主義への反発があります。新古典主義はルネサンスや古代ギリシャを理想とし、歴史画や宗教画を格上とし、芸術アカデミーや官展(サロン)が認めた「権威」ある作品を是とします。
この旧態依然とした体制に反発し、生まれたのが印象派と言われています。見比べると作品の特徴の違いに驚くと思います。アングルやダヴィドが新古典主義に属します。
ルノワール「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」
ミレー「落穂拾い」
アングル「グランド・オダリスク」
いかがでしたでしょうか。絵画を見る際の参考になりましたら、幸いです。
余談ですが、イタリアやスペイン、ベルギーには著名な画家が存在し、絵画も数多く残されています。その理由としてカトリックの国だったことが挙げられます。いずれ、これについての記事も書きたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。